さて、大阪インテが今週末に迫ってます。

…新刊ありませんがorz


委託させていただいている「無能薬」さんが参加されていますので、お買い求めの方はそちらによろしくお願いします。

私の方のこれまでの発行は殆どが18禁本です。全年齢も一冊だけあった…はず…って、一冊だけかっ!

「なぁ、ヒューズ」
「何だロイ。改まって」
 ソファで新聞を広げて読んでいたヒューズは、真剣な様子で目の前に立ったロイに気付くと新聞を折り畳んで膝の上に置いた。
「聞いてみた事も無かったから聞いてみるのだが、お前、自分が大総統になろうとは思っていなかったのか?」
 一人では天辺に行けない。そう暗にヒューズに協力を仰いだのは確かにロイだ。
 だが、もしかしたらその役はヒューズであっても良かったのかもしれない。
 ヒューズには充分にその素質があると思うからだ。
「もしかして、先に私が言ったからお前が言い出しそびれただとか。そんなことがあるんじゃないか?」
 ヒューズは野心家というわけではないが、出世意欲やそういったものは時々見える。
 周囲からの評価は『気さくで人当たりの良い陽気な男』であり、決してそれが間違いではなくても、それだけが全てではなく全く逆の本質を持っている事もロイは知っている。
 ロイの危惧に対し、ヒューズは何を言い出すのかというようにプッと吹き出すと、軽い笑みを口元へと浮かべる。
「俺が大総統になるのか? そいつは無理だ。俺は国とロイどっちを取るかなんて局面になったら、間違いなくおまえさんを選んじまうからな」
 多分、口では『国を重んじる――』なんて尤もらしい事を言ったりするのだろうが、心の中ではロイ一択で。およそ天秤の上に乗せられないロイという一人の人間と国一つと言う膨大なものを平気で量り比べた挙げ句に天秤をロイの方へと傾けてしまうに決まっている。
 もちろん、最悪の局面に面した時にはなるべく最後までどっちも諦めたりはしないが、本当にどちらかしか無い窮地となればロイを選ぶ。
 そう考える時点で、ヒューズに天辺に立つ真の資格など無いのだ。
 ヒューズはちらりとロイを見た。
 最悪の局面を迎えた時、ロイならばどうするだろう。
 ……きっと迷って迷ってどちらも捨てられないに決まっている。
 最後まで何一つ諦めないだろう。
 だが、それでいいとヒューズは思う。
 甘い理想だけで国は治められないが、正義と平等を持たない者が上に立っても国は乱れるだけだ。
 ロイはこのままで良い。ロイが裁き切れないものがあれば、それを切り捨てていくのが自分の役目だとヒューズは思っている。そして、それが適任なのだとも。
「安心しろよ。俺は一度だって、天辺を目指そうなんて思ったことは無ぇんだ。俺の役目はおまえさんを大総統にすること。それまでおまえさんを全力でサポートすんのが俺の仕事だ」
 そう言って退けたヒューズに対し、ロイは不満顔でその顔を睨んだ。
「私を大総統にするまで、か?」
 気に入らない。そう顔に書いているロイに対し、ヒューズはロイの言いたい事を敏感に悟ると、一層ニヤリとした風に笑みを深めてロイへと片手を差し伸べた。
「――その先もずっとだ」
 ロイを大総統の座に就けるまでではなく。その先の未来もずっと。共に有ってこの国を変えて行く。
 いつか交わした約束を、たがえる事など無い。
 ロイはようやく満足そうに頷く。ヒューズの意思も確認して安堵したのか、わざとらしく鷹揚な態度で背筋を伸ばす。
「頼りにしているぞ、ヒューズ」
 そう言うロイを引き寄せて、ヒューズは忠誠を誓うような恭しい口付けをロイへと贈る。
「勿論だ。マスタング大総統」
 戯れて呼ぶその名称を、現実のものにするために。
 二人はまた、誓いを新たにするのだった。


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今更なお話です。小ネタのみ。

ヒューズとロイだけを絡めると、やっぱり雰囲気がマジメになってしまいます。わんわんとは大違い!(笑)

愛あるヒュロイ大好きです。

この信頼関係が辛抱堪りませんw

「大佐。その持ち方――」
 リンゴを左手に持ち、果物ナイフをその表面に当てるロイの姿勢に違和感を覚え、ハボックが首を捻った時。
 ザクッ!
 豪快に果肉を切り裂く音がして、リンゴの斜め上が綺麗に無くなった。
「え……?」
 皮を剥いている音とは違う。それよりも、皮を剥こうとしている構え方とは明らかに違う。
 握り拳でナイフを持つロイにそのまま続け様にザックザックと果肉を削られて、リンゴは見る間に小さくなっていく。
「ちょ、ちょっと! 大佐、ストップ!」
 慌ててハボックが制止をかければ、ロイはどうかしたのかというように手を止めた。
「何をストップするんだ? ほら、リンゴが剥けたぞ」
 ロイの手の中のリンゴは確かに皮は無くなっていたが、果肉も殆ど消えている。かろうじて芯に多少の実が残っているくらいだ。
「どうしてリンゴは剥くと小さくなるんだろうな」
 真顔で聞かれてもハボックだって困る。
 ロイが果物ナイフと一緒に持って来た皿の上には、剥かれた皮――というよりも削り落とされた果肉がゴロゴロと転がっている。
「大佐……って、料理が出来るって言ってましたよね」
 それを微妙な顔つきで見たままハボックが恐る恐る問う。
 僅かに残っている果肉を芯から切り落としたロイが、それをフォークに刺しながら頷いた。
「勿論出来る。ヒューズが作ってくれるようになってからは一切手を出させてくれなくなったから、余り作らなくなったのだがな」
「……そうですか。それって何時くらいからです?」
「確か出会ってすぐ、だったと思うぞ」
「それより前って、自分では何を作って食べていたんですか」
「研究をしていると食事を忘れる事が多かったが、時間が惜しくて大抵はパンやミルクを詰め込んでいたな」
 研究に没頭するとロクに食事を摂らず、寝ることもしないとは聞いていたものの、ロイの生活はハボックの予想以上にずさんなのだと思い知った気がした。
 それにヒューズがロイの世話を焼いている理由が、食べ物で釣っているだけではなかった事をハボックは一瞬で理解してしまった。
 ハボックでさえヒューズに料理を叩き込まれた時、野菜の皮を剥いたり切ったりといった基本はある程度出来た。それは生家が雑貨屋を営んでおり、店が忙しい時にはハボックも食事の支度を手伝ったり、時には一人で作ったりしていたことによる。
 だが、ロイの場合まるで料理センスが無いようだ。
 錬金術は台所から生まれた――という謂れがあるようだが、このロイの様子を見る限り錬金術の才能と料理センスとは全く関係が無いと言って良いなとハボックは判断した。
「ハボック」
 不意に呼ばれ、顔を上げたハボックの眼にロイの笑顔が映る。
「口を開けろ」
 言われるままに口を開いたハボックの前に、小さなリンゴの果肉を刺したフォークが近付けられた。
「――いただきます」
 パクリと食いついたそれはまさしく一口サイズで、しかも芯に近い部分だったせいか少々酸味もあった。それでもロイがハボックの為だけに剥いてくれた事がとても嬉しくて有り難いと思ったから、ハボックは素直に美味しいと言って嬉しそうな顔をした。
「良かった。リンゴは沢山あるからもう一つ剥こうか。それから、風邪にはお粥という物が良いそうだ。すぐに作るから待っていてくれ」
 ハボックの笑みを見たロイは自分も嬉しそうな顔になり、再び果物ナイフを手にリンゴに挑んでいく。
 きっと誰かから風邪に良い料理を聞いて来たのだろう、楽しそうに話すロイの手によって二つ目のリンゴが勢い良く削られていく様子にハボックは肝を冷やした。
「いえ、その、風邪なんて大したことも無いですし、大佐にそこまでしていただく訳には――」
 ロイの手付きは今にも刃物で指を切られそうだし、火なんか使われて少しでも火傷をされた日には、どこぞの髭眼鏡に抹殺されてしまう。
 ハボックはどうにかしてロイを説得しようと試みた。
 しかし。
「おまえには何時も感謝しているのだ、こんな時くらい、世話を焼かせてくれたって良いだろう?」
 真摯な目を向けられてしまい、それ以上説得する事が出来なくなってしまう。
 ロイは面倒身が良い。どちらかというと世話をされるよりも自分が人のために何かをしたくてたまらない方だ。特に一端懐に入れてしまった人間相手にはその気持ちが大きくなる。
 普段はヒューズやハボックに世話を焼かれてそれに甘んじているが、それはどうしてもマスタング組の活動においてロイの負担が最も大きくなるためで。負担が疲労と言う形で蓄積してしまわないよう、少しでもロイの休む時間を増やすための彼等の協力であると割り切って受け入れている。だがロイ自身は何時も自分の事を一番に思ってくれる二人のために、何かをしたくてウズウズしていた。
 しかし、ヒューズは全く隙が無い上に仕事ではロイより処理能力が高いので世話を焼かせてはくれないし、ロイを甘えさせる事はあってもヒューズが甘えるなんて事は絶対に無い。
 自然、期待は幾ら体格が良くても年下であり部下であるハボックへと向くのだが、ハボックだって男であるからにはロイに頼られたいし、ヒューズに甘える以上に自分に甘えて欲しいという願望があった。
 だが。 
 今のロイの眼は、風邪を引いているときくらい甘えてくれと思い切り期待に輝いている。世話を焼く気満々である。
 ――とても断れねぇ……
 ロイに対して極端に弱いハボックは、結局ロイの申し出を断ることが出来なかったのである――。

 錬金術師というのは探求者である。
 古い物事や万物の法則を理解しながらも、決して常識に捕らわれず、常に新しいこと、それまでの常識を覆すような考え方を持っている。
 探究心を忘れた錬金術師は死んだも同然であるのだから、その好奇心は一生とどまることを知らないのが普通である。
 そして、研究には常にリスクがつきまとう。
 一つの成功の影には百や千の失敗はつきものであり、それを無くして成功は有り得ない。その失敗を恐れず嘆かず諦めず、新たな挑戦を繰り返すのが真の探求者であり錬金術師なのだ。
 そしてそれは、ロイにとって料理も例外ではなかった。
 教えられた通りに作るという事を試みず、何故ここで砂糖なのか、塩ではいけないのか、もっと違う作り方が無いかと一度疑問を抱いてしまえば、探求者は好奇心を抑えることが出来ない。
 ――その結果、料理がどういった状態になるのか。
 答えは明白だった。


 翌々日。司令部へと直接出勤してきたハボックを出迎えたのは彼を目敏く見つけたヒューズだった。
「よー、聞いたぜハボック。お前、見舞いに行ったロイに料理させたんだってな」
 ……出たなこの性悪髭眼鏡っ!
 キッと睨みつけるハボックを全く気にせず、ヒューズはニヤニヤと意地の悪い笑みを湛えている。
 仕事をサボって見舞いに行ったロイがハボックの看病をして料理を作った――というところまでは、サボり終えて戻ってきたロイがホークアイに捕まって説教されている現場を目撃したので把握している。
 その料理がどんなモノであるかは、これはロイと付き合いの長いヒューズならば直ぐに想像が出来た。
「ワンコが生意気に風邪なんか引くからだ。ナントカは風邪引かねぇって言うのに、自分で自分を頭が悪いと自己紹介するような馬鹿の見本が風邪なんか引いてどうすんだ」
「俺だって人並みに風邪くらいひきますよっ」
 結局、ハボックは二日間休みをとっている。
 二日目も風邪という名目で休んでいたのだが、本当の理由は風邪ではない。
 キッと睨みつけて反論するハボックの背中を手加減のない力でバシッと叩き、ヒューズは素早く周囲を見回すと共にハボックへと小声で言い募る。
「昨日の休みはロイの料理が原因か?」
「う……」
 さすがにお見通しかと、ハボックは言葉に詰まった。
「腹を壊したなんて、ロイには絶対に言うんじゃねぇぞ」
「分かってますって。折角あんなに頑張って作ってくれたのにそんなこと言えるわけが……」
 結果的に出来上がったものはともかく、ハボックの為にと慣れない腕を奮ってくれたロイの姿はハボックにとって本当に嬉しいものだった。その好意を無下にするような事を言える訳が無い。
 そう言おうとしたハボックの言葉を、溜息と共に吐き出されたヒューズの言葉が止めた。
「違うぞ。……ロイはな、失敗したまま終わる男じゃねぇ。必ず成功するまで挑戦するんだ。見舞いの料理が失敗だったと知ってみろ。今日から毎日、成功するまでロイが飯を作り始めるぞ」
「げ……」
 思わずハボックが自分の胃の上を押さえる。アレを毎日だなんて、考えただけで身がもたない。
「今日から復帰できるな? いいか、絶対にロイをキッチンに近付けるなよ」
 その復帰というのが、職務への復帰ではなくマスタング邸でこなす家事への復帰であると正しく理解して、ハボックはしっかりと頷いた。
 そして、もう絶対に風邪をひくまいと心に誓ったのである。


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お読みいただいて有難う御座います。

だらだらと続きましたが、完結です。

日常ネタとかほのぼのネタは苦手なもので、なかなか進みませんでした。しかも内容薄くて申し訳ない。とりあえずはロイが料理が下手だというオフィシャルネタをやりたかっただけなんですorz

何ていうかHなのはサクサクっといくんですけどね(爆)

気がついたら三月のインテ大阪イベントのゲンコ締め切りがもうすぐです;

この前一月のイベントが終わったばかりだと思ったのに早いもんですねぇ。

三月は間に合えば何か一冊やりたいなとは思っていますが、五月に繰り越しする可能性もっ!

ネタを模索している最中ですので、気長にお待ち下さいw

ではでは、寒いですが風邪をひかないように。

ワンコの呪いかどうか知りませんが、私は先週 風邪っぴきでした;

 フュリーは雨の日に仔犬を拾った。
 出来ればフュリー自身が面倒を見たかったのだが、寮住まいであるために動物を飼うことは出来ない。
 そこで、職場の面々にこの犬を飼ってくれる者が居ないかと訊くことにする。
 可愛い仔犬だし、貰い手はすぐに見付かるだろう。そう思っていたアテは見事に外れた。
 ファルマンは生き物に興味が無い様子だし、ブレダは犬嫌いで全く話にならない。
 面倒見の良いハボックならばどうだろうと期待を込めて問い掛けてみれば、真顔で返ってきた返事と言えば――。
「炒めて食うと美味いらしい」
 勿論、ハボックは冗談のつもりだったのだが、現役の実働部隊でありサバイバルに長けたハボックが言うと、いつか本当に保存食にされそうな気がしてしまう。
 慌てて犬を奪還し、フュリーが次に眼を向けたのはタイミング良くその場に現れたヒューズだった。
 いつも陽気で人当たりが良く、温厚で頼り甲斐があると評判のヒューズならば犬の飼い主として理想的だ。そう表情を輝かせて話を持ちかけてみた。
「ヒューズ中佐! この犬を飼っていただけませんか?」
 しかし、ヒューズは仔犬の頭を楽しそうに撫でながらも、フュリーが期待したような返事はしてくれなかった。
「犬かー。悪いがもう犬はいっぱいいっぱいなんだよなぁ」
「え、もう飼っていらっしゃったんですか」
 ヒューズは佐官であり、住まいもアパートではなくそれなりの邸宅を構えているはず。そうであれば既に番犬くらい居ても不思議ではないと思った。
「あー、いや。俺が飼ってんじゃねぇんだ。けどな、もう見てるだけでも充分だ」
「――? 世話が大変そうってことでしょうか」
 素直に首を傾げるフュリーに向かい、ヒューズはゆっくりと頭を振りながら腕を組む。
「世話が大変っていうより……世話が焼けるというか」
 チラリ。
 ヒューズの視線はどうみたってハボックの方を向いている。
「……なんでそこで俺の顔を見るんですか」
 低く呟いたハボックの悪態は綺麗さっぱりと聞き流され、ヒューズはわざとらしい溜息を吐きながら言葉を続けている。
「人懐こくて尻尾振るのは上手い大型犬なんだが、どうも頭が悪くてサッパリだ。家の中でも場所を取るし、主人にべったりくっついて離れない上に客が来るとヤキモチ妬いて追い返そうとするしなぁ」
「そ、それはきっと番犬としての役目を果たそうとしているんですよ」
 犬をフォローしようとするフュリーはヒューズが言うところの『大型犬』を庇おうと一生懸命だ。
「……その犬から、主人に害を成す不審者だと思われてんですよ中佐」
 その横から再びボソリとハボックが口を挟む。
「俺には犬の方が害獣に見えるんだがな。ったく、無駄メシ喰らうばかりで癒しにもならねぇ」
 何故か剣呑な雰囲気となる上官二人に、フュリーは仔犬を抱えたまま途方に暮れる。
「でっ、でも、この仔犬はそんなに大きくはならないタイプだと思いますよ。きっと中型犬くらいです。どうでしょう、その方にもう一匹飼って貰えるように頼んでみてもらえませんか」
 ヒューズの言葉を真に受けているフュリーの頼みも懸命だった。
 何しろ、仔犬の貰い手が見付からなければ元の場所に返して来るようにホークアイ中尉に言い渡されているのだ。
 こんな寒い雨の中、犬とはいえ子供を外へ放り出すなんてフュリーには出来ない。
「もう一匹かー。確かに、飼ってるヤツは自分の犬が可愛くて可愛くて仕方が無いみたいだしな」
 溜息交じりのヒューズの言葉。
「犬は飼い主が好きで仕方が無いみたいだが、飼い主の方もワンコを気に入っちまってしょうがねぇっていうか――。あんな駄犬なのになぁ」
 え……。
 今度はハボックの方がヒューズの言葉に面食らう。
「昔から、莫迦な犬ほど可愛いって言うのは知ってるんだが」
 莫迦な犬ではなく莫迦な子供じゃないか、だとか、犬に何か嫌な思い出でもあるのだろうかという突っ込みは心の中だけで済ませて、フュリーは精一杯の笑顔を浮かべる。
「そうですよきっと。自分の犬が一番可愛いって良く言うじゃないですか」
 うんうん。
 フュリーと、少し離れた場所で一緒に頷くハボックの頭がシンクロしている。
「どうでしょう、とにかく見ていただくだけでもお願いできますか? もしかしたら気に入ってもらえるかもしれませんし、犬だって二匹一緒の方が寂しくありませんよ」
「そいつは無理だろうなぁ。犬ってのは、二匹一緒に飼おうとすると、凄いヤキモチを妬くんだぞ。拗ねるし構って欲しくてキャンキャン鳴くしで、どうしようもなくなるんだ」
「だから、なんでそこで俺の顔を見ながら言うんですかっ! 俺は別に構って欲しくて吠えてなんか……」
 ハボックの怒声に、仔犬とフュリーはキョトンとして振り返る。
「……何でもねぇ」
 ハボックはバツが悪そうに煙草を取り出し、ヒューズは可笑しそうに腹を抱えている。一人内容を理解出来ていない様子のフュリーに、ヒューズは提案をした。
「その仔犬の飼い主、一応ロイにも当たってみろ。ロイのやつ、犬が大好きだからな」
「本当ですかっ」
 犬好きと聞いてフュリーの顔が明るくなる。とにかく早く仔犬の飼い主を捜してやりたくて仕方が無いのだ。
「本当だ。どんなにデカくて頭の悪いワンコでも、見捨てず傍に置いて可愛がる酔狂な人間だからなぁ。俺だったらとっくに捨てて新しい優秀な犬を選び直してるとこだ。全くどこがいいんだか」
「え……?」
「ヤキモチですか中佐。大佐には犬の良さが分かってんですよ」
「え?」
 フュリーを挟んで会話しているヒューズとハボックの遣り取りに、フュリーは困り果てて助けを求めるように周囲を見回す。
 そこに運良く、ロイが通り掛るのが見えてあからさまにホッとした顔で駆け寄った。
「すみません。マスタング大佐、ちょっと相談があるんですが」
 フュリーの声に気付いたヒューズとハボックが一先ず言い合いを止めたことに安堵して、仔犬を抱えたままロイへと追いついた。
 ロイは会議を終えて自分の執務室へ戻るところで、フュリーは仔犬を拾った経緯を伝え、仔犬の存在をアピールする。
 仕事に戻った他の面々を置いて、ヒューズとハボックは仔犬の行方が気になる……というよりロイがどう答えるのかを聞き届けたくて着いて来ていた。
「ほぉ! 犬か」
 仔犬を見て興味を示したロイはにっこりとした好感触の笑みを浮かべている――と、少なくともフュリーにはそう見えた。
「犬は好きだぞ」
「本当ですか!?」
 ヒューズの言う通り、ロイは犬好きのようだ。フュリーは喜び、それを本人の口から聞いたハボックも、我が事のように鼻の下を伸ばしている。
「中佐がどう思っていようと、大佐はワンコ好きなんスよ。大佐に好きって言われるなら、たとえワンコ扱いでも俺は全然構いませんっ」
「へぇ。そうかよ。よく言ったなワンコ」
 ニヤリ。
 ヒューズが思惑ありげな顔をしたのと、ロイのとんでもない犬好きが発覚したのはその直後だった。
「何よりその忠誠心!! 主人の命令には絶っっっ対服従! 過酷に扱っても文句を言わんし給料もいらん! そう! まさに人間のしもべ! いいねぇ 犬!! 大好きだ!!」
「……………」
 絶句したフュリーは、この人に飼わせてはいけないとロイに頼むのを一瞬で断念した。
 そして、そこには同じく放心したハボックの姿があった。
「どうしたワンコ。ロイの愛を受け止めてやんねーのか」
「――犬、犬の話ですよね。俺のことじゃありませんよね……」
「おまえさん、心当たり一個も無いって言えんのか?」
 勿論、ロイは犬の話をしているのであり、ハボックの事を言っているわけではない。しかしロイが犬に対して冗談か本気かはともかくとして、そう答えるのを知っていたヒューズは、それ以前の会話で上手くハボックとワンコと犬という言葉を混ぜてしまっていた。そこでまるで今の発言が犬の話題ではなくハボックのことだと言わんばかりのしたり顔で言われてしまうと、ハボックとしても違うと思いつつも落ち込んでしまわずにはいられない。
「大佐っ!! 俺は下僕なんかじゃなく大佐の恋人ですよねっ! お願いですから恋人……せめて大事な部下だと言って下さいっ!」
「な、なんだハボック? 急にどうしたんだ?」
 仔犬の危険を感じたフュリーが他の飼い主を捜しに部屋を出て行った途端、ハボックはロイに泣き付き、ヒューズは腹を抱えて笑い転げていた。


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ブラックハヤテ号がフュリーに拾われた時のパロネタです。

ハボックはコキ使われていますが、愛があると信じています(爆)

しかしまぁ、ハボは恋人か下僕かっていうより、ペットというポジションが似合いますねw


vol.8がまだ未完ですが、こっちが先に書けてしまったのでupしました。

インテックス大阪での初売りが無事に終了しました。

おいで下さった方、本をお手に取っていただいた方、有難う御座いました。


コピーの新刊も無事に完成しました。

製本するはずの土曜日が実は正月連休明けなので稼働日にされていたのを直前になって知って大慌てでしたが; (普段は土日は休み)

製本参加できなくてスイマセン; 製本していただいた方本当に有難うございます。


次は三月のインテックスに参加します。というかまた委託させていただきますv

何か新刊出来たらいいなー。と思っていますので、ヒュロイ好きさんや犬みたいなハボックが好きな方、またよろしくお願いします。


予定…は、言ってもあまり実行されないので言わない方がいいのかもしれませんが(笑);

一応、新刊の「秘めはじめ」でチョロっと出ていた、3Pになったなれそめ(?)を書こうかなと思っています。

……エロ本ですw


お好きな方はお立ち寄り下さい。


では、インテ参加者の方々、お疲れ様でした!